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2025.10.22
現代のファッション業界は、目まぐるしく変化し続けている。トレンドはSNSによって一瞬で拡散され、ブランドはスピードと話題性を競うように新作を発表している。そんな時代にあって、エルメスは異質な存在だ。
「流行を追わず、品質とクラフツマンシップに徹する」——それが、エルメスというブランドの核である。
エルメスの代表作といえば、バーキンやケリーといったレザー製品が有名だ。だがそれらは決して大量生産ではない。一つのバッグを完成させるのにかかる時間は20時間以上。しかも、製作はひとりの職人が最初から最後までを一貫して手掛ける。大量消費が当然となったこの時代に、手間と時間をかけることを惜しまない姿勢は、もはや信仰に近い。
エルメスは「欲しくても買えないブランド」とも言われる。入荷のタイミングも数量も非公開。バーキンを求めて何年も待つ顧客も珍しくない。だがそれこそが、エルメスが“モノ”を超えて“体験”を売っている証でもある。ラグジュアリーとは、価格や素材以上に「得がたさ」であり、「選ばれる価値」であると、彼らは知っているのだ。
とはいえ、エルメスは決して古びているわけではない。むしろ、テクノロジーやサステナビリティにも先進的に取り組んでいる。Apple Watch Hermèsとのコラボレーションや、きわめて慎重ながらも確実に進むデジタル戦略。派手な広告もなく、セレブリティに媚びることもなく、静かにブランドの未来を紡いでいる。
エルメスが私たちに教えてくれるのは、真のラグジュアリーとは「手間」や「時間」に価値を見出すことだ。
忙しさを誇るのではなく、時間を味わい、選び抜かれたものと長く付き合う。そんな贅沢な生き方を、エルメスは静かに提案しているのだ。