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2025.11.26
GMTマスターほど、名前そのものが語っている時計は珍しい。
「Greenwich Mean Time」──世界標準時を基準に、複数のタイムゾーンを同時に読み取ることができる。だが、この時計の魅力は、単に“便利だから”で片付けられるものではない。GMTマスターは、世界を舞台に生きる人々にとっての 精神的なアイコン なのだ。
その起源は1950年代、国際線の長距離化が進み、パイロットが時差とともに空を駆け抜けるようになった時代まで遡る。パン・アメリカン航空の要求に応える形で誕生したGMTマスターは、青赤の“ペプシ”ベゼルをまとい、昼夜の区別すら曖昧なコクピットで、正確に時間を読み解くためのパートナーとなった。
しかし、面白いのはここからだ。
航空産業の発展とともに“空の道具”として広まったGMTマスターは、やがて 世界を渡り歩くビジネスパーソンや、旅という価値そのものを大切にする人々 の腕で輝き始める。サブマリーナーが海の時計なら、GMTマスターは空の時計。スピードと距離を象徴するようなベゼルの二色は、異なる土地と文化をまたいで生きる、現代人のマインドに重なる。
最新世代になっても、この時計の本質は変わらない。セラミックベゼルはより強靭になり、ムーブメントは長時間パワーリザーブを備えるようになった。それでも、GMT針がゆっくりと24時間周期で回り続ける姿は、どこかロマンチックですらある。
「自分は今ここにいる。そして、もうひとつの場所でも時間は流れている。」
腕元に二つの時間を抱える感覚は、世界が広がるような、不思議な高揚感を与えてくれる。
出張の多いビジネスパーソンにも、国境を越える旅人にも、あるいは“世界を近くに感じたい”という静かな願望を持つ人にも。GMTマスターは、単なる時計ではなく、 世界とつながるための象徴 として存在する。
飛行機に乗らなくてもいい。
旅の計画がなくてもいい。
この時計を手に取ることは、「次の目的地を思い描く自由」を手元に置くことに等しいのだから。