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2025.12.31
棚の奥でほこりをかぶり、気がつけば何年も蓋を開けられないままの香水がある。
手に入れた瞬間はあれほどときめいたのに、いつしか日常の流れの中で役目を失い、ひっそりと“眠って”しまったボトル。
でも本当は、香水は眠っているわけではない。
あの小さなガラス瓶には、買った日の気持ちや、当時の自分のセンス、季節の匂い、誰かとの思い出──
その時の自分そのもの が密閉されている。
香りには、時間を記憶する力がある。
使わなくなった香水があるのは、ただ忘れているからではなく、その香りを纏っていた“あの頃の自分”が遠ざかっているだけだ。
数年ぶりにキャップを開けたとき、ふわりと立ち上るトップノートが一瞬で記憶を呼び戻すあの感覚。
香水は、過去へのショートカットでもある。
中には、少し色が濃くなったり、香りが丸く変わったものもあるかもしれない。
だが、それも悪くない。
香水は生き物のように熟成し、時間とともに変質していく美しさを持っているからだ。
今の自分には、新しい表情になったその香りのほうが似合う場合だってある。
眠っている香水を一つ取り出して、手首に小さくひと吹きしてみる。
「あの頃の私」と「今の私」が、香りの上でふわりと重なる瞬間がある。
それはまるで、昔の手紙を読み返すような、少し照れくさくて、でも温かい時間だ。
香水は、身だしなみの道具でも、贅沢品でもなく、
自分自身の変化を教えてくれる静かな鏡 なのかもしれない。
眠っている香水があれば、それはただの“使いかけのボトル”ではない。
あなたの人生の片隅に置き忘れた、香りのタイムカプセル。
今日はほんの少しだけ蓋を開けて、
その記憶の香りと、もう一度出会ってみてもいいのではないだろうか。